旭川地方裁判所 平成12年(ワ)182号 判決 2000年12月27日
原告
向峰好子
被告
有限会社旭川緑匠
主文
一 被告は原告に対し、三二七〇万六五九四円及び内金三一七〇万六五九四円に対する平成七年一一月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用は被告の負担とする。
四 この判決は仮に執行することができる。
事実及び理由
第一請求
被告は原告に対し、三三七一万六五三七円及び内金三二七一万六五三七円に対する平成七年一一月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二事案の概要
本件は、交通事故の被害者である原告が、加害者の使用者である被告に対し、損害賠償を求めた事案であり、中心的争点は損害額である。
一 前提事実
1 交通事故の発生(以下「本件事故」という。)
日時 平成七年一一月一七日午後五時五二分ころ
場所 北海道上川郡美瑛町美馬牛第二付近道路
加害車両 普通貨物自動車旭川四四れ一五〇五(以下「本件車両」という。)
運転者 訴外森川昌弘(以下「森川」という。)
態様 森川が本件車両を運転して、前記日時に前記場所を走行中、運転操作を誤って、本件車両を路外逸脱させ、同車に同乗中の原告が負傷した。
2 森川は、被告の従業員であり、被告の業務として本件車両を運転中、本件事故が発生した。
二 当事者の主張
1 原告の主張
(一) 傷病名
頭部挫傷、頸椎脱臼骨折、顔面打撲等。
(二) 治療経過
<1> 美瑛町立病院 平成七年一一月一七日通院
<2> 医療法人回生会大西病院(以下「大西病院」という。)
入院 同日から平成八年五月二日
通院 同月三日から平成一一年一一月二四日
<3> 大橋耳鼻咽喉科医院(以下「大橋病院」という。)
入院 平成九年六月一一日から同年七月一〇日
通院 平成八年三月二一日から平成一一年六月一日
(三) 症状固定日
大西病院につき同年一一月二四日
大橋耳鼻科につき平成一〇年一〇月九日
(四) 後遺症の程度・等級(後遺障害別等級表・併合四級)
六級五号 脊柱障害
七級四号 神経・精神障害
一〇級二号 言語障害
一二級五号 体幹骨障害
(五) 損害 別紙損害内訳書のとおり合計六〇〇一万七二〇三円
(六) 損害の填補
原告は以下の合計二六三〇万〇六六六円を弁護士費用を除く損害に充当した。よって、弁護士費用を除く残損害額は三二七一万六五三七円、これに弁護士費用を加え残損害額は三三七一万六五三七円となる。
(1) 自賠責保険より一九〇九万五五五〇円(内訳・後遺障害分一八八九万円、障害分二〇万五五五〇円)
(2) 労災保険より七二〇万五一一六円
原告は、労災保険より、平成一二年九月二九日現在で、休業補償給付及び休業特別支給金として二三二万三八九二円、障害補償年金等として四二六万三一六〇円(うち、定額の特別支給金二二五万円)の支給を受け、同年一〇月一三日にも障害補償年金として二〇万一三一六円の支給を受けた。それ以降も障害補償年金として二か月に一度二〇万一三一六円を支給される予定である。本来、定額の特別支給金や将来支給される障害補償年金は損害を填補するものではないから、損害額から控除する必要があるのは四五三万八三六八円に過ぎないが、原告は労災保険より損害の填補を受ける分として七二〇万五一一六円の控除を認めるものである。
(七) 残損害額
よって、被告は原告に対し、不法行為に基く損害賠償として三三七一万六五三七円及び内金三二七一万六五三七円に対する本件事故発生日たる平成七年一一月一七日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による金員を支払え。
2 被告の主張
(一) 傷害の内容、治療の経過、症状固定日は不知。
(二) 後遺症の程度は争う。本件車両に同乗していた他の従業員四名も傷害を受けたが後遺症はない。早く治癒している。
(三) 損害の計算は争う。原告は有職者であるから、賃金センサスによるべきではない。
(四) 損害の填補と残損害額は争う。原告は労災保険打切後、傷害年金を受けており、また、東京海上火災保険株式会社から搭乗者傷害保険金が支払われるはずである。
第三当裁判所の判断
一 甲三、四及び五の各1、2、六の1ないし21、七ないし九、一一の1、2、一二によれば、本件事故により、原告が頸椎脱臼骨折、顔面打撲等の傷害を負った事実、その治療のために美瑛町立病院に平成七年一一月一七日通院し、大西病院に同日から平成八年五月二日まで入院、同月三日から平成一一年一一月二四日まで通院し、さらに大橋病院に平成九年六月一一日から同年七月一〇日まで入院、平成八年三月二一日から平成一一年六月一日まで通院した事実(入院日数一九八日間。実治療日数一四六九日間。)、同年一一月二四日に症状が固定したが、脊柱障害(C六/七前方固定。六級相当。)、両側手掌知覚障害、四肢腱反射亢進、反回神経麻痺等の神経障害(甲八の日常生活検査表に照らし、七級相当。)、構音機能障害等の言語障害(一〇級)等の後遺障害(併合四級)を負った事実を認めることができる。
二 右事実をもとに、損害額を算定すると、以下のとおり合計五八〇〇万七二六〇円となる。
(一) 入院雑費 二五万七四〇〇円(一日当たり一三〇〇円、一九八日分)
(二) 休業損害 一四〇一万三八五七円
原告は昭和一七年一一月五日生まれの有職主婦である(甲六の1、弁論の全趣旨)。本件事故当時平成七年の賃金センサス女子労働者の平均賃金(五〇から五四歳)により、年間収入を三四八万二〇〇〇円として、実治療日数一四六九日分について算定する(一円未満切捨)。
三四八万二〇〇〇円×一四六九日÷三六五
(三) 慰謝料 一九〇〇万円
傷害慰謝料としては、入・通院期間に鑑み三五〇万円が相当である。また、後遺症慰謝料としては、後遺障害の程度に鑑み一五五〇万円が相当である。
(四) 逸失利益 二四七三万六〇〇三円
三四八万二〇〇〇円×〇・九二×七・七二一七
三 損害の填補
原告は自賠責保険より一九〇九万五五五〇円、労災保険より七二〇万五一一六円の給付を受けたものとして、損害額から控除することを認めている。被告は、原告が傷害年金を受けており、また、東京海上火災保険株式会社から搭乗者傷害保険金が支払われる等として、さらに控除すべき給付があると主張するが、搭乗者傷害保険金及び将来給付を受ける障害補償年金を控除の対象として考慮することは相当ではなく、これ以外に損害から控除すべき給付があると認めるに足りる証拠はない。よって、前項で認定した損害額から、原告が認める二六三〇万〇六六六円を控除すると、弁護士費用を除く残損害額は三一七〇万六五九四円となる。原告が主張する弁護士費用一〇〇万円は相当性を認めることができるので、これを加え、残損害額は三二七〇万六五九四円となる。
四 以上によれば、原告は、被告に対し、民法七一五条に基づく損害賠償請求として、三二七〇万六五九四円及び内金三一七〇万六五九四円に対する本件事故発生日たる平成七年一一月一七日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求めることができるので、この限度で原告の請求を認め、その余は棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判官 岡部純子)